懸案解決「帖昆爐」…

■近世の…

江戸周辺の紀行文として

 村尾嘉陵の「江戸近郊みちしるべ」〔別名「嘉陵紀行」〕

江戸近郊道しるべ 26巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション (セミ)オリジナル版
嘉陵紀行 : 全五編 - 国立国会図書館デジタルコレクション  翻字版

と双璧をなす

 十方庵敬順の「遊歴雑記」(以下「雑記」)

  敬順師の肉筆の和歌、大東文化大のコレクション中にある
   http://www.ic.daito.ac.jp/~oukodou/gallery/img/picture/p-507.jpg 

■この…

52歳で長男に寺を譲って隠居した老僧は、かつて

 近藤知新庵〔かの、エトロフ探検で有名な近藤重藏の父親。官職からみておそらく御家人か?〕から、抹茶道を学び
 小島卜斎なる人物〔素性不明〕の茶室で煎茶道を研究した

*で、遊歴の先々で煎茶をたしなむ描写がしばしば登場する**

*略歴は
 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/952977/5
 の右葉「解題」参照

**「雑記」での「帖焜炉」への言及の概要は
 「遊歴雑記」中の「帖昆爐」 

■茶の…

いわゆる(抹茶系の世界と煎茶系の世界「共通名詞」〔多分、当の世界の当事者さんたちには、絶対にできないだろうから、それを期待する方がおかしいので仕方ないし、この文脈では「ムキ」になっても無意味だろうから〕)やたらにおおざっぱな「くくり」でいえば「野点」をするのだから、湯は必須。

 当時のことだから「魔法瓶」があるはずがないかわり、水は、手近な池や川からいくらでも調達できる時代だったが、何らかの方法で水を沸かす必要がある(イワタニのカセット・ガスコンロも当然無い)。

 そのために、敬順が使っていたものが

 「帖昆爐」〔タタミコンロ/たたみこんろ〕。

 文字から推測できるのは、折り畳み式のコンロ、今風に言えば「フォールディング・ストーブ」ということになる。

■しかし…

この「帖昆爐」が、どのような形をしているものなのか、とくに「どのように『たたまれるのか』」については、ネットを探してもなかなか見つからない。そればかりでなく、いくつかの博物館の図録を見ても出てこないのだから始末が悪い。

 (これに対し、やはり遊歴雑記にしばしば登場する、アウトドア用シート兼ポンチョである「野蒲団」の方は、敬順師ご自慢のアイデアらしく、ご丁寧に挿絵や製作法まで「雑記」の中で披露している
  「雑記」初編 巻之中 第七十八 久良岐郡杉田村梅見の急雨
   https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/952977/158

■とはいえ…

ときおり「手を変え品を変え」で検索していたら…

まず、参考になりそうな

http://www.page.sannet.ne.jp/rokano28/edo/tabi3.htm

(Webアーカイヴは
 往来手形/算盤/旅の小道具/江戸 (archive.org)

のページの3段目に写真のある「携帯用酒温器」なるものが見つかり、

とくにWeb Masterにお願いして送っていただいた詳細な写真のうち、1枚がこれ

 

 手前側におそらく炭火をいれて、奥側の器の酒を燗するようである。

■さらに…

その後に、「これでしかあり得ないだろう」という画像が見つかった。
https://www.facebook.com/rocaniiru/posts/1894370463924609/

 銅板を巧みに細工し、蝶板状のヒンジを使って折り畳むことで、厚さ1センチほどの板状になるようになっていて、展開すれば煎茶道で使われる「涼炉」のプロポーション。

 これなら、懐に入れて持ち運ぶことすら可能である。

 これと、茶葉と急須〔急火焼〕ないし土瓶と茶碗があれば、
・水は、最寄りの川の水を汲み
・火は、そこらの、枯れ草を火付けに、枯れ枝を燃料にすれば
茶を煮る〔当時は、茶を直接煎じていた〕ことが可能になる。

■結構…

繊細な細工のようだし、デザインも垢抜けていて、このようなものを何とか手に入れたいとかねがね思っていたのだが、ネット・オークションを含むマーケットにはなかなか出現しない。

 考えてみると、実用品としては価値を失っているし、工芸品としても飛び切り美しいというほどのものではないので、ここ数10年で一気に減少してしまった末に残った骨董店は「お宝」に商品を絞り込んでしまっているので、この種の元・実用工芸品(「民芸品」でもないし)がマーケットからは疎外されてしまっても無理もないといえる。

■しかし…

ほとんど、入手は絶望的と思われたので、しかたなく、いわば「思想」は共通の、フォールディング・ストーブの、これ

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でも買ってみようか、とも考えたが、煎茶用の湯沸かしとしては、いかんせん大きすぎるし、ステンレス色も無粋である(と、いっても、チタンで作られたら「高くて買えない」)。

 これを使うくらいなら、むしろ、ガソリンストーブのオプティマス8Rと、父が青年時代に使っていたコッフェル中のケトルを持ち出す方が、まだ「雅趣」があるといってよいだろう。
(8R はモデルとしては50年以上経過、コッフェルは製造後あらあら100年経過なので、年代だけではあるが、おおむね50年という文化庁の重要文化財の指定基準をクリアしている。)

■本当に…

たまたまなのだが、久しぶりにネット・オークションで探して見る気になった。

 「帖焜炉」「帖昆爐」などで検索しても、当然ながら出てこない。

 しかし、ふと思いついて「ダメモト」で「涼炉」で検索をかけてみると…

 なんと、出てきてしまった

 ヤフオク! - 【雲】時代品 古銅 七宝透かし折畳式涼炉

 しかも、上のフェイスブック掲載のものとほとんど同じ。

 ここ1年ほど「こんなものがないかなぁ」とネット・オークションで探すと、「こんなもの」が出ていることが多い。
 今回も、その「ネット運」の賜物というほかない。

 幸い、オサイフの都合がなんとか付きそうな範囲で落札でき、今日、ゆうパックで届くことになっている。

■届いたら…

燃料には、小ぶりな「松ぼっくり」が最適そうなので、近所の公園に拾いにゆこうか、と思う。

【追記】210206

 届いた。

 さっそく、近所の公園に松ぼっくりを調達しに行ったが、松の巨木が結構あるのに、整備というか清掃のし過ぎでなかなかみつからない。

 ようやく見つけたものも、肝心の帖焜炉の上面の縦横が各7.5センチ(対角線方向では10.6センチ)と思っていたより小さく、見つけた松ボックリの方が大きすぎて、帖昆爐でそのまま使うのは難しい。クリスマス・リース用のパーツでも探すしかないか?

【追々記】

 届いたものを観察すると、先のフェイスブックの画像のものと、外観上のデザインには全くといってよいほど違いがみあたらない(手作り品なので、部品同士の納まりには微妙に違うところはあるし、内部の火皿の穴の配置は結構異なる)。

 どうも、ここまで似ているということは、量産とは言えないが、いわば定番のデザイン/構造の製品として、ある程度の量が継続的に作られていたように思われる。

 それだから、敬順師としては、オリジナル・デザインの野蒲団は雑記の中で紹介しながら、ある程度の数が出ていて知っている人もそれなりいるはずの帖昆爐についてはあえて解説する必要を感じなかったのかもしれない。

【追々々記】

今回入手の帖焜炉の写真は、今のところは、上記オークションのページをみていただくのがよいのだが、その性質上、いずれ消えてしまうので、当座資料的に撮った写真を、とりあえず載せておくことにする。

Dsc03951_s

Dsc03953_s

Dsc03956_s

Dsc03943_s

Dsc03945_s

Dsc03959_s

■「爐台」の仮調達

敬順師の時代にどのようにしていたのかまだ見当がつかないのだが、同師の行動範囲は近郊なので、帖昆爐を使うときに、いつも濾を載せる平な石が調達できたとも思えない。

今回入手した帖昆爐をみても、確かに爐の中ほどに火床のあるほか、一番底部に底板はあるのだが、組立式だけにある程度の隙間はできてしまうし、敬順師のも、原理的にみても似たり寄ったりと想像できる。

隙間から火種がおちたりすれば、今以上に、山火事とまでは言えないにしても、野火〔のび〕は起こしかねないので、爐を平らに支える台を兼ねた「火受」が必要だったと思われる。

実は、当方が帖昆爐を落札した直後に、やはりヤフオクに出品された帖昆爐は、底板がない代わりに、その本体とは別部材として火皿をかねた爐台が付属するタイプだった。

【参考】

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dgwk2121氏のヤフオク出品時
時代物 古銅四方涼炉 野点涼炉 煎茶道具(H015)
の画像より

この火皿。おそらくは銅板を板金細工したものと思われ、当方の昆爐の爐台として、この火皿のような物がほしいところである。

とはいえ、この火皿同様の造りのものは、大昔、スケルトンを使ったガス・ストーブの台として使われていたのは記憶しているが、帖昆爐の台となるような小ぶりのもほは、見たことがない。「あるいはこの系統の品物としてあったかもしれない」というものはいくつか思いついたが、非常に数が限られていそうなので、帖昆爐と同じように「これしか無い」と確信できるものを気長に探すしかなさそうなのである。

そんな折、100均のダイソーで、こんな

Dsc04048s

角皿を見つけた。

一見、これを「天目」

Dsc04047s

と呼べるは別として、光の角度によっては「きらぎらしい」ものの、結構地味にも見える角度もあるし、帖昆爐を載せてみると、こんな

Dsc04052s

具合で、やってみると、意外なほどしっくりなじむ面もある(表面については、使い込んでゆくうちには「ヤレ」てくれるだろし)

なお、同じ意匠の正方形のタイプもあったのだが、使い終わった炭を広げて処理するには、この位の面積があった方が使い勝手はよいし(敬順の時代なら、火さえ消えていれば、そこいら辺に蹴散らしておけば足りただろうが、今はそうはゆかない)、帖昆爐を持って歩く時の、プロテクタにもなるし

Dsc04055s2

持ってみると見た目より意外に軽い(計測すると287グラム。ちなみに、帖焜炉の方は199グラム)ので、これは拾い物だったかもしれない。

 

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