帖昆爐の火熾し

 

十方庵敬順の煎茶を再現する

から、火熾しは、単純に考えても

1 火打石などによる発火

に始まり

2 火口

3 焚き付け

4(本)燃料

といった手順が必要と思われるが

敬順師の時代を想定すると

1・2をショートカットとして、火縄・懐炉があり得るし

3の初期段階として、付木という経木の先に硫黄を付けた資材もあるなど、結構奥が深そうなので、ここに独立させることにした。

 

●燃料

雑記には、火熾し時の消し炭に言及している

三編 巻之下 第二十二 高麗郡入間河原の煎茶風景 埼玉県川越市大字寺山
 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1913009/165

  「消炭吹き起こしつつ煎茶仕掛けて」

ものがあるが、この焚き付け後の最終的な燃料には触れていない。

したがって「言うまでもないほど」の普通の燃料だったと思われる。

とはいえ、帖焜炉が、前記のような木米の急火焼、ときとして小ぶりの土瓶サイズの湯沸かしを載せる、前記の木米喫茶図程度の大きさ、つまり、今の涼炉と大きな差はなさそうなので、薪を使うのは無理で、小割にした炭と見るのが素直だろう。
(もっとも、野原に落ちている松ぼっくりを使ったこともあるかもしれないが、あくまで想像の域を出ないうえ、油分の豊富な松ぼっくりは当時焚き付けや燃料として広く使われていたので、現地調達のつもりでも、すでに拾われ尽くしている可能性も高いので、やはり、木炭は携えていったはずである。)

●着火方法

・火打石と火打金(鎌)

が一番オーソドックス。

Ex.モース

Japan Day by Day, 1877, 1878-79, 1882-83 : Edward Sylvester Morse : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive

p.185

Everybody uses the flint and steel in lighting his pipe and every kitchen has its tinder-box. The matches I have seen in this country are the Swedish safety match.

Japanese homes and their surroundings : Morse, Edward Sylvester, 1838-1925 : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive

 当時の人は、いわば幼少のころから、火打石で火を熾すのに慣れているはずなので、造作もない作業だっただろう。

【参考動画】

 「ソロキャンプ」で有名な「ヒロシ」のヴィデオシリーズ(ただし、この回は取材される側じゃなくて取材する側)

 とにかく、火打石による着火法についての蘊蓄満載。

https://youtu.be/sUcb_-ajflM

 ↑のヴィデオでは、火打石としてメノウが推奨されているが、

 火打石 - Wikipedia

によれば、火打石に使える石材として

玉髄、チャート、石英、ジャスパー、サヌカイト、黒曜石、ホルンフェルス

が挙げられて、いわゆるフリントは、チャートの一種の由。

 石英の一種である水晶は我が家のどこかにある(ただし、火打石としては、台所で使うならともかく大きすぎる)。

 チャートは、庭石に大きなものがあるので、

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目立たない場所を節理に沿ってタガネで割れば速攻で調達できそうだが

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それよりも、黒曜石なら、かつで諏訪の山中(諏訪大社下社の御柱となる巨木を切り出す地域)で拾ってきた手ごろな大きさのものを庭に撒いてあったので、これを拾い出す

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のが一番手っ取り早かった。

・火打金(鎌)

は、鋼鉄と言えば、工具置き場に、折れてしまったヤスリが転がっているはずなので、当座、それで実験してみようと思う。

 

●火口

火打石と火打金を使っても、出るの只の鉄粉の火花なので、そのままでは、ただの「火の粉」。

 まずは、これを(炎まではゆかないまでも)燃焼する火にする必要がある。

 それに使うのが、火口〔ほぐち〕であるが、様々な素材が紹介されているところ、その中に

ヤマブキの芯(の消炭)という情報がネット上にあった。

https://kuromatsucraft.blog.fc2.com/blog-entry-201.html

 ヤマブキならば庭にいくらでも生えているし、うまい具合に、冬の間にできたその枯れ枝が残っている。

 普段は春先、葉が展開する前に剪定するのだが、今年は、その枝を、何本か保存しておいて、消し炭を作ってみようかと思う。

 なんといっても、ヤマブキなので、粋な感じがよい。

■しかし…

敬順師の遊歴は、大半が自宅からの日帰りで、それ以外の場合も宿屋や宿坊(秩父の三峯神社への代参時)泊まりであり、改めてゼロから火を熾す必要はなく、出発時にかまどや火鉢の灰の中の熾火(おきび)から火を移して持ち出すことも可能だったはずであるし、通常は江戸近郊での移動なのだから、いわば、火の焚かれている場所だらけ。行く先々で、竈、火鉢、タバコ盆から「火をもらう」ことも容易だろう。

その場合、火を持ち歩く方法としては

・火縄

 当時、芝居小屋や川船などでは、タバコに火を付けるための、火縄が売られていたほか、旅の必需品となっていたという。

  http://www.jti.co.jp/sstyle/trivia/know/episode/2011/01/03.html(2011/04/29閲覧)

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 廣重+三代豊国「
双筆七湯巡」内「塔の澤」
 女形の三代目岩井粂三郎が左手に持つ竹の枝に火縄が巻き付けてある

・懐炉

 ガソリン(ベンジン)ではなく、炭を使う懐炉の歴史は意外に古く、元禄期(1688~1704年)に遡る。
 当初は、イヌタデ、ナスの炭末が燃料だったが、後には、キリ、ヨモギ、ゴマ、アサさらには藁も原料に用いられるようになったという。

 Dij
 モース・コレクションから
 小西四郎=田辺悟・編
 「モースの見た日本―セイラム・ピーポディー博物館蔵モース・コレクション/日本民具編」
 小学館/1988・刊 p.98 より


の2種という選択肢がある。

これらの、どちらかが使えれば、火打ちと火口の過程を省略して、次の焚き付けの過程に進めることができる。

●焚き付け

雑記に登場する焚き付けらしいものは、以下のとおり

●第3編
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1913009/11

 三編 巻之下 第二十二 高麗郡入間河原の煎茶風景 埼玉県川越市大字寺山
 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1913009/165

骨董袋〔ズタブクロ〕より例の帖昆爐を取り出し
    :
消炭吹き起こしつつ煎茶仕掛けて

消炭。

ただし、火付きがよいのも確かだが、少量でも火力が強いらしいので、そのまま本燃料に使った可能性もありそう。

 ほかに、松ボックリなど油分の多い素材も考える。

【追記】

2週間ほど前、庭の端に、結構太いモウソウチクの竹の子が生えてきた。気が付いたときには地上1メートルに達していたので、食べるには手遅れ。

1年も育てば、木よりも生育の早い竹のよいところで、カースペースの車止めとか工作材料に使えるので、幸い通行の邪魔になる場所ではないので、当面放置することにしたが、竹の皮のサイズも、庭の在来のシホウチクの比ではないし、結構油分を含んでいるようにも見えるので、焚き付けの候補として採集しておいた。

【脚注】

火熾しで、理論的に一番明快なので、参考になるのは、この

火打ち石の歴史〜いろいろな時代の火起こしを科学してみた〜【火起こし実験】【キャンプ、アウトドア実験】 / 米村でんじろう[公式]/science experiments - YouTube

火打ち石を使って簡単に火をつける方法お教えします【火起こし実験】【アウトドア、ブッシュクラフト、サバイバル実験】 / 米村でんじろう[公式]/science experiments - YouTube

あたりと思われる。