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2021/05/29

クワを播く

■広島の…

家内のお友達から、庭で生ったという クワ の実が大量に届いた。

要するに葉っぱを「お蚕さん」の餌にする木の実で、ちょっと渋甘の実は久しぶり、しかも、こんな大量なのは初めてなので、おいしく頂戴しているのだが、それだけでは勿体ない気がしてきた。

■実は…

我が家の庭には、実生からそだった、クワの仲間の ヒメコウゾ の木

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中央の明るい緑色の葉がそれ

があって、そちらも、すでに小さな丸い実を付けている。

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こちらの実は、稔るとヤマブキ色で、今回のクワより小粒だが甘みが強い

【参照】この木が、ヒメコウゾと同定できるまでの、経過は

「ヤマグワ」の素性調査: 平成作庭記+α (cocolog-nifty.com)

「ヤマグワ」の素性調査【現地調査篇】: 平成作庭記+α (cocolog-nifty.com)

■そこで…

このクワも、それほど巨木になるとは思えないので、庭で育ててみたくなった。

 もっとも、この種の液果は、鳥が餌として食べ、周囲の果肉を消化し、糞として排泄した種子(いわば、本当のタネ)の方が、発芽率が高いといわれている。

 小鳥でも飼っているのなら、食べてもらってから、回収した糞を播くのが理想的なのだが、あいにく、我が家にはいない。

■そのため…

多少なりとも、鳥の糞に条件を近づける算段を考えてみた。

 鳥の体内で消化されることを考えてみると、

・その胃液などの体液

・その体温

の影響が考えられる(他に、体内の特殊な酵素なども考えられるが、わかったところで、どうしようもない)

●体液は

 トリもヒトと同じ脊椎動物なので、酸性液なのだろうが、成分不明だし、判明しても素材の調達が難しい

●体温は

 ヒトと較べて大差はない*ように思えるのだが、むしろ問題は加熱時間。つまり、食餌から排泄までの時間なのだが、こちらはなかなか見当が付かない。
 ただ、我が家周辺を飛び回っているヒヨドリは、早朝庭木に来て虫らしきものを食べる一方、昼過ぎ位に洗濯物にバクダンを落とすことが多い。
 また、そのバクダンことトリの排泄物は大小兼用なので、体内で不要になった水は、飛ぶときの無駄な荷重にしかならないので、長時間蓄えているとも思えない。
 ということから、大体6時間位ではないかと考えた。

*小型の生物だし、飛ぶためには体脂肪を増やせないので、環境変化に対応するために、心持ちヒトより高い気もする。とはいえ、後述の「人肌燗」の温度から大きく外れるとも思えない。

【追記】

ニワトリの例 であるが、最小3時間弱、最大7時間強であることがわかった。
また、胃液も酸性とのこと。
上の推定がそう的はずれでなかったことになる。
果肉は比較的消化がよいので、3時間半でよさそうである。

■あまり…

ムキになっても仕方ない話でもあるので、なるべく熟れた黒色に近い実を何房か選んでビニール袋に入れ

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あまりに古く、近々捨てるつもりだった、ホカロン

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を持ち出してきて、

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ビニール袋を載せた。

 あまり高温になって「煮えて」しまっても困るのだが(一応、念のため耐熱温度100度というトレーに載せている)、1時間ほど経過して、いわゆる「人肌燗」程度のほんのりとした加熱状態にとどまっている。

■一応…

目安にしている64時間ほど経過する、今日の夕方、準備済みのプランタに播く予定。

【追記】

17時になって、加熱も5時間を越したので、用意しておいたプランタに実を移し

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房をできるだけ切って分解するように、土中に混ぜ込んだ。

 土の量がやや不足しているようにも思えるので、近日中に補充することにした。

 プランタの土も、一応培養土だし、1日2回自動潅水される場所なので、あとは発芽とその後の生育を見守るほかない。

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2021/05/26

コッフェル、先割れスプーン、グリップ、ついでにシエラカップ

註記

これまでは、別アーティクルの中に居候的に付記していたのだが、「大家」とのサイズのバランスがとれないほど大きくなり過ぎたものもあって、本末転倒。

とはいえ、ほとんどが、いわば「昔の話」なので、別々に独立させて移転させるほどの話とも思えないので、こちらにまとめて移転させることにした

[1]メスキットとコッフェル

 CB缶のシングル・バーナーを導入した

分離型シングル・ガス・バーナー: 平成作庭記+α (cocolog-nifty.com)

が、ストーブ本体とCB缶1本の一式を、従前のオプティマス8Rとユンガーの燃料ボトルと同様に、メスキット

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最初は、下の写真のミズノの12φ+13φ、次いでホープの12φ+13φ+14φのコッフェルを購入したが、
ホープのポット3つというのは、実際に使ってみると「無用の長物」。

最終的には、メスキット+シエラカップだけに収斂した

なお、本当に初期は、アルミ製で、柄がフォールドできるテフロン加工のフライパンを持ち出した。しかし、海魚にもその傾向はあるが、とくに川魚はトレトレでは水っぽくて全くおいしくない。地元の人たちが囲炉裏や火鉢であぶってから食べるのはそのせいとわかり、早々に装備からはずれた。

大半が、「ジフィーズ」ブランドのフリーズドライの「かやくご飯」か、さもなければ、粉末スープ(当時は、リプトン・ブランドのものが断トツにおいしかった)に、フランスパンちぎってを投入した「パン粥」だった(せいぜい+してサラミソーセージ*を丸かじり)ので、シェラカップがあればポットは1個ですむので これだけで必要にして十分すぎる位だった。
 なお、リッドの上は、後述の
「先割れ」部分を自加工で作ったスプーン**

*余談ながら、大藪春彦の小説で、主人公が丸かじりする、4ポンドだったか5ポンドだったかの「ボローニャ・ソーセージ」に憧れていたものの、どこで買えるのか見当がつかなかった。
 やはり、この描写にあこがれていたのは、当方のほかにもおられたことがわかった。フムフム。
 耽溺、マサ青木の美食とクルマ : 大藪春彦が好んだボロニアソーセージ、うまい! ~高崎ハム~ (livedoor.jp)

 もっとも、そのうちに、ボローニャ・ソーセージよりもっと魅力的な同類、つまり「肉の練り物」が見つかってしまった。

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産地である道東地区での、忠類川でのサーモンフィッシングとか、殖民軌道(軽便鉄道)跡の調査で100キロ以上走り回るときには、これとフランスパンを調達することが多くなった。

**先割れスプーンの、ごく最近調達した、個人的には「決定版」を後記[2]でご紹介する。

と一緒にディパックの下の気室に収めることができることがわかった。

 それには、最近流行らしい「ずん胴」型のクッカーよりも、

  • 底が丸っこいこのメスキット

    とか

  • 今や骨董クラス」の略・台形断面のコッフェル

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の方が、どこにでも「滑り込ませる」ことができるので向いている。

このタイプ、今でも、

・EPI(アルミ3点食器セット C-5201)
     https://www.yamakei-online.com/cl_tool/detail.php?id=12972
・ユニフレーム(Aluminium Dish 3)
     https://www.uniflame.co.jp/product/667910

 さらに調べてみると
・協栄金属工業(ダイヤ印 手付食器5点セット)
     https://www.youtube.com/watch?v=R8tdH-wIyz4

 から発売されているようである。
 ただし、このうち、ユニフレームのものは、手持ち2種のような、
リッドの内側の突起と、ポットの縁の凹みの組み合わせで、両者を軽くロックする機構はないようである。
  クッカーマニア ミニクッカー編 ソロクッカー 3分35秒あたり以降

[2]先割れスプーン

 もう30年以上前になるが、アメ横か下北沢で、メスキットを入手したころ、資材のコンパクト化のために、どうしても、当時は学校給食に使われていて評判悪かったが、先割れスプーンが欲しくなった。

 一番手っ取り早いのは、学校給食用のそれを入手することなのだが、今と違ってネットもなく、どこをどう探してよいのかわからないので、仕方なく自作することにした。

 フィールドでの食事は、スプーン、それに、釣りなので当然もってゆくことになるガーバー・サカイのナイフがあれば一応足り、フォークはどうしても必要なわけではないが、スプーンでは拾いにくく、さりとて、ナイフを持ち出して刺して食べるほどでもない食材を、ちょっと引っかけて食べるのに「あれば便利」なことは疑いないので、下北沢でスプーンを調達し、柄をカバーしているプラスティックを引きはがし、スプーンの先に糸鋸とヤスリで浅い切り込みを作った。

 その後も、時折、売り場を観察していたのだが、なかなか、自作品に代えるに足りるものがない。

 また、チタン製の「スポーク」

【レビュー】チタンで決まり!ライトマイファイヤー チタンスポーク [MASATY CAMP] (fc2.com)

も近隣のフリマで入手してみたが、カトラリーとしては、まずはスプーンあるいはフォークとしてそれらと遜色なく使えるのが基本性能であるべきで、これは非常用の防災用品としてしか使いようがなく、フリマで放出した方の気持ちがよくわかった。

 その後、小田急線の向ヶ丘遊園駅前で、シエラカップの蓋になるといわれていたケーキ型

プチ・クラフトとプチ・リペア: 平成作庭記+α (cocolog-nifty.com)
中「2-4」参照

を見つけた後、店内を「なにかDIYパーツに使えるものはないか」と、ガーデニング用品やキッチン用品の中を歩き回っていたところ、「サラダトング」

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なる、ステンレス製で、トングの両端ともスプーンの形状ながら、片側が「先割れスプーン」状になっているものを見つけた。

 買ってかえって、早速、金鋸でスポーク状の方を切り出して、切り口をヤスリで整形してみると…

・先割れスプーン

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カップヌードルは、先端にヌードルを引っかけて問題なく食べることができた
わるく言えばペナペナだが、
何よりも軽量なのが最大のメリット

の完成。

 さらに、残りは

・流し台の上のワイヤにぶら下げておける味見用のスプーン

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になった(これも、ケーキ型→シエラカップ・リッド+パスタの湯切り台同様に、1機能あたり55円の幸せ)。

 

[3]コッフェル用のグリップ

■コールマンの…

「ピーク1 442-700型」ガソリン・ストーブ。

 短期間しか販売されていなかったとのことから、今となっては中身のストーブ自体よりもレア品らしい、専用アルミケース

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 クッカーとして使えると言われているが、とくに吊り手やハンドルが付いているわけではないので、そのためにはグリップが不可欠。

 基本的には、災害時用の備品なので、ストーブ、ケースと一緒に保管しておく必要があるので、近所のフリマで入手した、米国Mirro社のコッフェル・セット(これも、災害時用備品)附属品のグリップ

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を、ストーブやライターと一緒にアルミケースに入れて保管していた。

 Mirro のコッフェルは、大小2つのポットには吊手が付いているし、ケトルもハンドル付きなので、単体のグリップが必要なのは、厚手のアルミ材の皿をフライパンとして使うとき程度にとどまるので、グリップが不可欠というほどの器材ではないためである。

■昨日…

三軒茶屋のセリアに寄ってみたところ、「クッカー・クリップ」なる、アルミ製のグリップがあった。

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 ネット上では見ていたものの、品薄と言われていたし、当方にとっては、上記の理由から「無ければ無いで済んでしまう」器材だったのだが、見ると、想像していたよりはるかに高品質感があり、Mirro のコッフェルにグリップを再補充するのに、これだけの物が110円で入手できるなら「まんざら損は無い」と、買ってしまった。

【追記】このとき、同じくセリアの Tableware Band 

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も、7・9・12・15センチの4サイズが入手できたので、それで、キャンプブームのお蔭で便利そうなものは全部入手できたことになる(とくに、先のMIZUNO/HOPEのと違って、Mirro のコッフェルは蓋のロック機構がないので、15センチのバンドでいわば完全整備状態にできた)。

■持ち帰って…

両者のグリップを較べてみると、サイズに大差はない。

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上が Mirro 下が セリア

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先端部の形はやや違うが、グリップ力に差はなさそうである

 もっとも、セリア版の方には、スプリングが内蔵されているので手を離せば自動的に「開」状態になるのが、Mirroとの違いとはいえるのだが、どちらもグリップとして使っているときには手で握り締めておく必要があることに違いはないので、使い勝手にそれほどの差は生じない。

■しかし…

Peak1のケースへの収納については、大きな差が生じてしまった。

 このケース。ストーブ本体にほぼギリギリのサイズなので、グリップ(やライター)を収納できるのは、4隅の隙間しかない。

 しかも、グリップを事前にケースに入れた後からストーブを入れることも、ストーブを入れた後でグリップを入れることも、おそらく不可能で、ストーブを3分の1ほど納めた状態からグリップと一緒にケースの底に落とし込む必要がある。

【参考】こういう

そろそろソロキャン!:セリア クッカークリップの改造(2) (naturum.ne.jp)
手もあるようです。MIRROのを持っていなかったら、手に負える金属工作の範囲なので、やってみたかもしれません。

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左下隅がMirroのグリップ

■やってみると…

この手順で、スプリングのために通常は開いた状態のセリア版のグリップを収納するのは、不可能ではないのかもしれないが、非常に難しいだろうし、そんな些末な問題についてフィールドで神経を使うのはバカバカしい。

 結局、Peak1のケースには、これまで通りMirroのグリップを入れ、セリア版のグリップは、Mirroのコッフェルの一番内側のケトルの中に収納することになった。


[4]シエラカップ

■今…

なんだか理由はしらないが、自称・他称・単なるモドキを含め、ネット上の画像を見る限り、玉石混淆で妙に世にあふれている「シエラカップ」

周知のとおり、もともとは、アメリカの(やや広義に捉えれば)自然保護団体である「シエラクラブ」の会員章がわりに当初は配付されたらしいのだが…

随分調べても「これが、そのシエラクラブの会員章である正真正銘のシエラカップ」だという、いわば「純正品」の画像は未だ発見できない

【追記】どうやら発見

「宇宙船とカヌー」の著者のケネス・ブラウアーは、父親がシエラクラブの理事だったため、幼いときは、日常の食器にもシエラカップを使っていたという。

On the Power of the Sierra Club Cup | Sierra Club

この記事中に写真のあるケネスの父デヴィッド・ブラウアーのシエラカップには、後述の○Rマークがエンボスされておらず、その所有者の素性からみても、これこそが、正真正銘の「純正」のシエラカップである可能性が高い。
やや角ばった書体の「S」は、SierraCup図鑑(後述)の下記のもの
Sierra Club “Sierra Club Cup” [ステン][300ml]Rマークなし – SierraCup図鑑 (stars.ne.jp)
が近い。

■世上…

底に「SIERRA CLUB ○R」とエンボスされているカップが「オリジナル」と呼ばれ、結構「べらぼう」な価格で取引されているようである。

この「○R」が付されているカップが、シエラクラブ自身あるいは同クラブの許諾を得た事業者によって製造販売されている製品であることは、まず間違いない(許諾もないのに勝手にやれば、いわゆる「手が後ろに廻る」事態となる。)

 その意味では、このエンボスのカップをオリジナルと呼ぶのも間違いではないのかもしれないが、それ以上に「本当の意味でのオリジナル」つまり「シエラクラブの会員章」として配付された、いわば「純正」のカップとはいえないのではなかろうか。

■なぜなら…

この○R付きのカップ
・現に当方も持っているうえ

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冒頭の「S」の字体が、先のブラウアー家の純正品と異なる

・今から30年以上前に山用品屋*さんで普通に売られていた
ものだからである。

*この山用品屋さん。どうやって見つけたのか今では記憶が定かでないが、東京駅八重洲北口から日本橋の丸善・高島屋に向かう道を途中で右に折れたところにあった間口せいぜい2間ほどの小さなお店だったが、記憶している限りでは、ザンバランのトレッキングブーツの「マウント・フジ」も、オプティマスのガソリンストーブ「8R」などを買ったのもこのお店である。シエラカップもこのお店で、最初無印のものを1000円位で買い、その後○Rマーク付きのを2000円弱で買ったように思う。
ついでにいうと、スポーツドリンクのハシリの「ゲータレード」の粉末を「二日酔いによく効く」と奨められて初めて買ったのもここ。

■この…

○R付きカップについて、当時何かの雑誌記事(当時は、当然今のネットはなく、その前身ともいえる「パソコン通信」のネット掲示板(BBS)もなかったので、雑誌記事しかまずあり得ない)には
(かつてのようなシエラクラブの会員章ではなく)「シエラクラブの活動資金を得るために販売されている」
と書かれていたように思う。

 したがって、当方手持ちのカップは
・「オリジナル」といっては誇大表示で
・由緒は正しいのだが、「純正品」ではないので
・「公式レプリカ」と呼ぶのが一番的確な表現なのではなかろうか。

■改めて…

この「公式レプリカ」のカップの「出自」を探ってみたところ

SierraCup図鑑

なるサイトの

Sierra Club "Sierra Club Cup" [ステン][300ml]A&F刻印付きノベルティ
https://sierra.stars.ne.jp/wp/item/590/

の裏面のシールの写真をみると、このカップは我国では手広く輸入アウトドア用製品を散り扱っている エイアンドエフ社 の取扱いで、ラベルに同社のURLが書かれていることから、比較的最近まで取り扱っていたことがわかった。

 さらに、SIERRA CLUB シェラクラブ オリジナルシェラカップ | 気ままにアウトドア (fc2.com) によれば、同社は、現在シエラクラブ自身が公式オンラインストアで販売している、やや華やかなロゴがエンボスされている 新デザインのカップ についても、2016年ころに、限定1000個ながら販売していたようである。

●トリヴィア

縁の部分に巻き込まれているステンレスワイヤのお蔭で、熱いものを入れても唇が火傷しにくいとされるが、さすがにカップごと加熱して火から降ろしたての場合は火傷しかける。

そこで、釣り仲間でゼミ・大学院同期の友人が見つけた方法。

・カップの中の液体に指を入れて指先を濡らす
・濡れた指先でカップの縁の唇が当たる部分を一撫でして濡らす
・気化熱で縁の部分が冷えるので火傷を防げる

 

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2021/05/14

廣重の「繪本江戸土産」の「冨士見茶屋」

■歌川廣重の…

作品として、比較的その名前があがることが少ないものに「繪本江戸土産」という絵草子があり、その中の一枚に「冨士見茶屋」がある。

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*これは、冊子だが、一枚刷りは
 https://www.library.city.chuo.tokyo.jp/bookdetail?14&retresult=page%3DDETAIL%26area%3D2%26comp6%3D1%26cond%3D1%26item6%3DAB%26key6%3D%25E5%25AF%258C%25E5%25A3%25AB%25E8%25A6%258B%25E8%258C%25B6%25E5%25B1%258B%26mv%3D20%26sort%3D1%26target1%3D1%26&num=1989748&ctg=1&area=2&areaimage=1

■この絵をみて…

さして深く考えることもなく、今の目黒駅から目黒不動に向かう、行人坂上の茶屋だと思い込んでいたのだが、よくよく右上のキャプションをみると、しっかり「渋谷尓〔に〕あり」と明記してある。

さすがに、行人坂

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廣重「江戸名勝図会」「行人坂」

を「渋谷」とは言わないだろうし、そもそも、茶屋の敷地の見晴らし(西)方向の地形(とくに擁壁の有無)も樹木の様子も違う。

念のためというか、同じく廣重の描いた別の絵

Ndlcs_20210514235301
廣重「東都坂尽」「目黒行人坂之圖」

S_20210515012201
「江戸名所圖會」(行人坂上)「冨士見茶亭」
看板を見ると、ここの「冨士見茶や」は固有名詞のようである

をみると、さらに地形や樹木の差が明瞭である。

■渋谷で…

富士を見晴らせそうな高台といえば、まず思い付くのが、正確には上目黒ではあるが、大山道(厚木街道/玉川通り/国道246号)の大坂上なので、図会を探してみると、時代は下るが、

Photo_20210515000201
「東京名勝圖繪」「上目黒大坂」

ここも西方向の地形はまるで違うし、こちらは街道沿いだけに道幅が広いうえ賑わいが違う。

■この…

リンク先
雑司ヶ谷鬼子母神と富士見茶屋。 [気になるエトセトラ]
によると、冨士見茶屋というのは、固有名詞ではなく、江戸中に数百軒あったのではないかとしていて、廣重も、少なくとももう1軒、雑司ヶ谷の冨士見茶屋を描いている。

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廣重「冨士三十六景」「雑司ケや不二見茶や」
現在の学習院キャンパス内にあった「珍々亭」という茶店の由

 たしかに、江戸やその近郊では、ちょっとした高台で南西方向を見晴らすことができる場所なら、どこでも、富士は見えるのだから

【資料映像】2005年10月地下化前の小田急線東北沢のこ線橋で撮影

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「冨士見茶屋」がいくらあってもおかしくないわけである。

■そのため…

この廣重の「渋谷」の「冨士見茶屋」を見つけるのは結構難しそうだが…いずれにしても、目黒川(支流の、北澤川〔用水〕、空川〔そらかわ〕を含む)の崖線にある坂道の上のはずで、それほど数多くはない

【参考】目黒川左岸、稜線上の景観ポイント例

57

 

うえ、

加藤一郎「郷土渋谷の百年百話」渋谷郷土研究会/S42・刊

の、38話 pp.211-212 によれば、

下北沢に現存する森嚴寺の境内にあった「淡島の灸に通う人たちの途中休憩した掛茶屋が、松見坂三田用水脇の富士見茶屋…、宮益坂にあった 」

とされているので、

北沢1丁目の「富士講碑」: 平成作庭記+α (cocolog-nifty.com) 参照

・宮益坂上

S_20210515013801
「江戸名所圖會」「冨士見坂一本松」
画面左奥が「不しみ坂」こと現在の宮益坂で、解説文によれば「茶亭酒亭あり」とある

ただし、ここも、街道の大山道沿いであるうえ、比較的早い時期から、絵のとおり家屋が立ち並ぶ「渋谷宮益町」と呼ばれる街場として取り扱われ、正徳 3 年(1713)には町奉行の支配下におかれた場所なので、先の大坂上と同様「賑わい」の点でやや齟齬がある

・滝坂道(現・淡島通り)の松見坂上

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「江戸名所圖會」「駒場野」

について、もう少し検討してみたいとところである。

 

【余談】

冒頭の、廣重の「繪本江戸土産」という表題。、浮世絵は、江戸切絵図と並んで、参勤交代で領地に戻る武士や地方の取引先に赴く商人、あるいは、伊勢参りなどの参詣の途中で江戸に立ち寄った旅人などが、文字通り土産として購入したといわれている。

 なにしろ、軽くて嵩張らないので、徒歩を原則とする旅の土産品としては打ってつけなのであるが、さらに、そのような用途には最適なタイプの絵が企画・販売されていたことは興味深い。

 前出の目黒行人坂上を例にとると、江戸自慢双筆三十六興中の

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を挙げることができる。

 この絵は、手前の人物画を三代歌川豊國、背景などを二代歌川廣重が描いていて、どちらも一流絵師による江戸の美人画と江戸から見える富士を描いた風景画という2タイプの絵を1枚買えば一度に手に入る、いわば一石二鳥の「お買い得」な絵になっている。

【追記】

個人的に前々から注目していたのは、おそらく廣重の担当と思える、今まさに行人坂を上りきろうとしている、中年男の供を連れた女性である。

供の男は軽口をたたいている様子だし、軽く懐に手をいれた仕草からみて、商家の女将という堅苦しい雰囲気はない一方、顔つきや服装からみて、いわゆる玄人筋の女性とも思えないので、たとえば繁盛している水茶屋の女将といったところではなかろうか。

いずれにしても、こんな粋な雰囲気の魅力的なお姐さんがウロウロしていることも江戸の魅力といえ、廣重が、あえて豊國の当時の典型的な美人画とは別に、こういった別系統の女性像を描こうとした動機なのかもしれない。

ここまで気付いてしまうと、同じシリーズのほかの絵にも、「廣重好み」あるいは「廣重自慢」の女性が描かれている可能性があるので、折をみて分析してみようかと思う。

 

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