« 旧・帝國陸軍無線機(地上用)の諸元 | トップページ | たかがカメラバッグ、されどカメラバッグ »

2015/08/09

旧・帝國陸軍「九九式飛三号受信機」復旧計画(予備調査篇)

北澤川文化遺産保存の会の…

毎年、山の手空襲のあった5月に開催するのが恒例となった
「戦争体験を聴く会・語る会」
が、平成27年5月23日に開催されました。

http://blog.livedoor.jp/rail777/archives/51984924.html

その折…

参加者のお一人のIさんが、展示用に、旧・帝国陸軍の、「隼」こと一式戦闘機にも搭載されていたらしい、九九式飛三号無線機の、受信機を持って来られました。

昔、アマチュア無線でもやっていたら、すぐにも食いついたのでしょうけれど、あいにく、こちらは低周波回路、要するに「オーディオアンプ」しかわからず、そのトランジスタ回路ならある程度見当が付くのですが、当然、この受信機は真空管式に決まっているので、およそ、その中身は「ご縁がない」ものであるため、「戦時中なのに結構ちゃんと造ってるよなぁ」などと外観を観察するにとどまっていました。

数日経って…

私が、この会にお誘いしたMさんから、メールが入りました。
曰く
「戦時中、埼玉の桶川にあった熊谷飛行学校の分校の施設が残っていて、そこでボランティアの解説役をされている方の中に、旧・陸軍の無線の専門家が居られる。一度、無線機を持って行って、復活可能かどうかご相談してみては?」

その結果…

Iさんを含め、総勢4名で、現地にお邪魔したのが、先の

旧・帝國陸軍熊谷飛行学校桶川分教場
http://baumdorf.cocolog-nifty.com/gardengarden/2015/07/post-1f66.html

の顛末だったのです。

当の瀬戸山さんは…

うかがってみると、「超」の付く有能な無縁技術者とはいえ、軍の学校時代でも実務でも、地上用の無線機専門だったとのことで、しきりに恐縮されておられましたが、当方にとっては得るところが多く、とくに有益だったのが、瀬戸山さんの机の上に置いてあった

Dsc04358tc2

「古典的パーツのサンプル」。

一言でいえば、当時は、主要部品の
・抵抗器が「竹輪のような形の巻線抵抗器」
・コンデンサが「キャラメルのような色・形のマイカ(雲母)コンデンサ」
が主流だったことがわかっただけでも大収穫でした。

実は、これらのタイプのパーツなら、今から3分の1世紀以上前になってしまいますが、オーディオアンプのパーツを探して、仕事場を抜け出して通った秋葉原とか、出張の空き時間に駆けつけた大阪の日本橋〔東京のは「にんばし」なのですが、こちらは「にっぽんばし」と訓む〕で、さんざん目にしたものだからです。

    ただし、当時すでに、オーディオアンプ用としては、(真空管式でも)抵抗器は酸化金属皮膜抵抗、
    
金属皮膜抵抗、カーボン抵抗が、コンデンサはフィルムコンデンサ、電解コンデンサ、セラミックコ
    ンデンサが、主流になっていて、マイカコンデンサも、音質面から珍重されてはいたが、形はかつ
    てのものと全く違う「DIP」型というものになっていた

当然、こちらも…

桶川にうかがうまで、手をこまねいていたわけではなくて、

一番肝心なパーツである真空管がUS-6F7(こちらは。ナスのような形のガラス菅に入っていてその一番上にも端子がある) か あるいは、それと同一の回路を金属製の「缶」(いわば「真空缶」)に封入したMC-804であること

804型は、今となっては入手困難らしいが、6F7は、今でも、ちゃんと動作テスト済みのものが、1本たったの1400円で入手できること

その他、大まかなスペックとして

通信距離:100Km(対地上)
周波数:受信1,500-6,700kHz
    ただし、今この受信機にセットされている線輪つまりコイルは
    P1060372s


    「4000~6750KC」(キロサイクル=Khzキロヘルツ)用で
    60mバンド 4750 - 5060kHz
        現在は、国内放送に使用。
    49mバンド 5900 - 6200kHz
        同じく、国内放送・国際放送に使用。
        ラジオNIKKEIが使用。冬に多くの放送局が集中する。
電波形式:A2(変調電信)、A3(電話)
    A2=AM、DSB(両側波)、トーン信号(副搬送波)を使用するモールス符号の送信
    A3=AM、DSBの電話
回路方式:スーパーヘテロダイン方式(MC804Ax5)、高周波1段、中間周波2段、低周波2段
    要するに「普通のラジオ」と違いがない

電源:直流変圧器(24V)
    電車に積んであるMGと同じ原理で、航空機の24V電源で回したモーターで、小型発電機を回
    して、真空管用のヒーター用の5Vと、高圧電源の250Vと600Vを発電する
空中線:固定逆L型

といった程度までは、ネット上の検索でわかっていました。

つまりは、桶川にお訪ねした結果
・最重要部品の一つである真空管は、いまでも入手可能らしいこと
み加えて
・同じく抵抗器やコンデンサも、時間をかければ「同じようなパーツ」は入手できそう
(「機能」だけに着目すれば「同等」のいわゆる「代替品」は、あらかたはあるが、後述のように、それを使ってまで動作させる価値があるかは別問題)
というところまではわかったわけです。

と、いうわけで…

関係者向けに作ったリポートは下記のとおり。

【99式飛3のレストア 手順】

1 もともと正常に動いている可能性がある
(1)この機械は、アメリカ軍も
  「大変コンパクトでよくできている」
  と評価していたようだし

  http://home.f04.itscom.net/nyankiti/ki43-sub5-electronic%20network.htm
  戦後もアマチュア無線機として重用されたらしいので、70年間放置されていたわけではなく、
  この間、それなりにメンテしながら無線機あるいは短波ラジオとして使われていた可能性があ
  る(逆にいうと、その間に、パーツがオリジナルのものから変わっている可能性があるが、真
  空管式の受信機が実用されていた時代なら、秋葉原に行けばオリジナルないしそれに近い
  のパーツは入手できたはず、ともいえる)。

(2)ゆえに、手を入れる前に、基本的な動作を確認する必要がある
① カバーをはずす
  といっても、マイナス螺子で、固着つまり錆付いている可能性がある。
  今のとちがって、先端の幅が合ったドライバを使い「緩めるときも押し回し」との鉄則に従わな
  いと、頭がつぶれてしまう危険があり、最悪の場合、ドリルで螺子の頭を削らざるを得なくなる。
② 5本の真空管のフィラメントが点ることを確認する
  内部に5本あるはずの真空管については、6F7というガラス管入りの「普通の真空管」と「804-
  A」という金属ケース入りのとの2つの可能性がある。
  本体後部の「低圧」(A電源)端子に、乾電池3本を直列にしたもの(4.95V)をつなぐと、前者
  の場合はガラス越しに点灯が確認できるので、とこかくも「真空管が『死んではいない』」ことが
  確認できる。
  後者の金属ケース入りの場合には、その方法が使えず、ある程度時間が経ってからケースを
  触って熱くなっているか確認するか、真空管をソケットからはずして、乾電池3本と電流計をつ
  ないだものを、ヒーター端子に接続して電流が流れるかどうか見ることになる。
  ただ、これらの真空管の場合、筐体の一番上にも接点があって、そこにも接続用のキャップを
  通じて回路がつながっているが、そのための電線の絶縁被服のゴムまたは合成樹脂が風化
  していて剥がれる危険がある。
  いずれにしても、このとき
  ・「水晶発振子」の位置や周波数(真空管の次というより真空管以上に壊れやすいので)を調
   べ
  ・その他、場違いな新しいタイプのパーツが使われていないかチェックする
③ 真空管が「死んでいれば」
  交換用タマを調達(6F7なら動作確認済みのが1本1400円で入手可能)して差し替える必
  要がある(804は入手難)。
  今のICやトランジスタの回路と違って、ソケットを使っているので、交換は(上記の「キャップ」
  
への配線には注意が必要だが)比較的容易である。
④ 真空管が「死んでいない」か「交換した」ならば
  本格的に、真空管が動作するための高圧直流電源をつないでみることになる。
  この99飛3には、裏面の端子

  P1060376s
  をみると、250Vと600Vの2つの高圧電源(B電源)がつながることになっている。
  ただし、250Vと600Vとは(完全な解析はまだだが)AGCと呼ばれる自動感度調整装置のON
  /OFFで、切り替えているようなので、当面は直流250V(と、ヒーター用5V)の電源を作ればよ
  
いことになる。
  600Vの安全な電源装置を組み立てようとするとかなりのコストがかかるが、250Vなら真空管
  回路としてごく普通の電圧なので、5000円程度で作ることができる。
⑤ 本来は、最初にB電源をつなぐときは、A電源をつないで十分温まってから、スライダックという
  電圧可変のトランスを使って100V程度から徐々に電圧を上げてゆき、異常な匂いや煙さらに
  は発火がないことを確認しながら、250Vにするのが望ましい。
⑥ 一応動作しているようなら、受話器ジャックにレシーバーをつなぐことになるが、今のところ、そ
  の定格負荷抵抗がわからないし、まずないとは思うが最初から大音量がレシーバーから出ると
  耳を傷めるので、最初は、100円ショップのミニ・アンプと同じくミニスピーカーをつなぐとよい。
⑦ 当然アンテナは必要だが、銅線、鉄線など、金属線ならなんでもよいし、どこにどう通しても火事
  になったりする危険はない。
  なお、長さは受信周波数から計算することになるが、おおまかにいって、戦闘機「隼」の操縦席
  の後ろから尾翼までの長さを想定すれば、戦時中のアンテナ線の長さといえるので、大間違い
  はない。
⑧ この状態で、スピーカーからザーといったノイズが出ているなら、深夜にはどこかの放送を受信
  できる可能性が高い(受信する電波の強度が強ければ、かなりいい加減な装置でも受信できて
  しまうようなので)
⑨ いずれにしても、その後は、高周波のしかも真空管の回路に精通している人に調整してもらうの
  が望ましい。
  この受信機は、軍用といっても基本的には短波ラジオなので、1969年代位まで、遠距離受信か
  アマチュア無線に凝っていた人には(当時は、装置を自作するのが原則だったので)可能と思わ
  れる。
  できれば、きちんと動作する調整用の測定器を持っている人にたのむのが望ましい。
⑩ ただし、基本的にこの受信機は。一般的な短波ラジオと機能的に変わりはないので、あえて復
  旧するなら、コンデンサー(マイカ、オイル)や抵抗(巻線型)など、できるだけオリジナルな部品

  を使わないと、あまり意味がないともいえる。
  2・30年前なら秋葉原に行けばかなり旧いパーツが入手できたが、今では、戦後の、いわゆる
  進駐軍の部品もあまり見かけなくなったので、それもなかなか難しい。
                                                         以上

これからは…

あえて、時間とコストをかけてでも、やってみるかどうかが一番の問題です。

上記の問題をクリアできたとしても、その後の大きなネックが
・水晶発振子が壊れていないか
   これがアウトだと、電子回路のプロの知人によれば、「同じようなパーツ」を探
   すのも難しく」(とくに、耐圧)、「ほぼ同一部品」が奇跡的に見つからないと、
   ほぼお手あげのようです

 【追記】https://twitter.com/tfr_bigmosa/status/621520463148134400 に、
       「陸軍の99式飛3号無線電話機は受信機に同調指示管を追加した飛3号改1を経て
        ローカルオシレータに水晶発振子を用いて安定化させた飛3号改2へと置き換えら
        れた。

       とあって、回路図の読み間違えがなかったことが確認できた。
       それにしても「同調指示管」って、多分「マジックアイ」のことで、一般家庭に置いてあ
       るラジオ(かつて、わが家にあった電蓄についていたし、昭和35年ころ叔父が買った
       真空管式レシーバーにもくっついていた)とか、地上用機なら非常に便利なものの、
       飛びながら、しかも大抵は「敵艦発見」とか「これから戦闘に入る」などといったクリテ
       ィカルなときに、
あれを使って「同調をとれ」というのはかなり無茶。

・コイル類が壊れていないか
   ほとんどが、コンデンサとバリコン(容量可変コンデンサ)がコイルと並列に接
   続された高周波増幅用で、最悪「銅線の巻きなおし」しかないようですが、そ
   れに必要な詳しいスペックが、まだ見つかっていません
にあります。

何分70年以上前の機材ですし、作られた時節柄、使われている素材も信頼できるものとはいえず、まさに「何が起こるかわからない」わけですので。

【追記】

久しぶりに検索してみたら…

「飛五」ながら、ものすごいページがヒットしました。

http://detector.xsrv.jp/tag/%E9%A3%9B%EF%BC%95%E5%8F%B7%E5%8F%97%E4%BF%A1%E6%A9%9F

今後、この「先達」の知見を活かさせていただけるかどうか…

|

« 旧・帝國陸軍無線機(地上用)の諸元 | トップページ | たかがカメラバッグ、されどカメラバッグ »

SupportKitazawaRiver」カテゴリの記事

コメント

TFR_BIGMOSA 様

貴重なご教示ありがとうございます。
>飛三号の同調指示管については…ネオン管だったのか
ダイアルを回して、同調が取れるとネオン管が「ポッ」と点く、というイメージですよね。
ただ、これだと、同調する方向に回しているのか、反対方向に回しているのかわからないという「忙しいとき」にシンドイ操作ですね、これ。

タマのスペックとそのヒーター切れの有無の確認が最初の作業なのですが「マイナスねじを押し回しで緩める」というのは、もう何十年ぶりなので、ちょっと自信がもてず、オーナーさんにお声がけできずにおります。

まずは、コメントへの御礼を兼ねて…

投稿: baumdorf | 2016/02/09 19:46

私のツィートがささやかながらお役に立てたようで、ありがとうございます。

飛三号の同調指示管についてはマジックアイだったのか、それともネオン管だったのか諸説あって私には判りません。

また、使用している真空管については
金属管「US6F7」の可能性もあります。
開けた際にカバー無しのナス管が5本あるなら「Ut6F7」です。

投稿: TFR_BIGMOSA | 2016/02/09 18:11

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132178/62044975

この記事へのトラックバック一覧です: 旧・帝國陸軍「九九式飛三号受信機」復旧計画(予備調査篇):

« 旧・帝國陸軍無線機(地上用)の諸元 | トップページ | たかがカメラバッグ、されどカメラバッグ »